2016/05/08

酔えない人生

私はお酒を飲んでもちっとも酔わないし何も変わらないし顔すら赤くならないし眠気も来ない。ずっと素面。そもそもはずっと向精神薬を服用してるから基本的にお酒は厳禁で、5年以上全く飲んでなかったんだけど、今年になって、ちょっと飲んでみたくなった。

横浜のあるお店でお酒を飲んだとき、隣の席にOLさん3人組がやって来た。お姉さんって感じの先輩と、後輩ふたり。可愛らしいひとと、落ち着いた感じのひと。
「さあ〜今日は語るし飲むぞ〜」とか言ってたので、すごい、ドラマみたいだと思った。私は田舎者で、ふだん方言にまみれて生活してるし自分も方言ひどいので、標準語で話すひとを見るとやっぱりドラマっぽいし虚構っぽいって思ってしまう。本当にいたんだ、すげえってなる。芸能人見つけたみたいな。夜の横浜でお酒を飲みながら語りに来た OLさんたち。この上なくドラマだ。

私は料理を楽しみながらいろんなお酒を飲んだ。かなり飲んだ。酔ってみたかった。しかし案の定、何も起こらない。色とりどりの、おいしく冷たいジュースでしかない。
つまんないな、と思う。おいしいけど。でも、夜の横浜でお酒を飲んでいるって状況には、田舎者なので興奮する。
店は賑やかだ。店員さんが次々にテーブルに料理を運ぶ。私もたくさん食べる。酒も飲む。

隣のOLさんたちが、かなりみんな出来上がってきて、恋バナをしている。可愛らしい後輩さんは、どうやら職場に好きなひとがいるらしい。でもなかなか勇気でないし慎重になってしまってアタックできないし、ふられるのが怖くて、毎日悩んでるみたいだ。先輩が「ガンガン行かなきゃだめだよー! 後悔しても遅いんだからー!」と気合いを入れる。酔ってる。姉御さが増してる。しつこい感じになってきてる。
可愛らしい後輩さんは「でも、怖いし」「私なんかが愛してもらえるかどうかわかんないし」と不安そう。そんな可愛らしい後輩さんをみて、落ち着いた感じの後輩さんが、「大丈夫、私がいるよ」と言いながら可愛らしい後輩さんを抱きしめた。(!)
すげえ。ドラマやん。すげえ。こんな世界ほんとうにあるんだ。こんなん錆びた田舎におったらわからない、横浜のOLすげえ。あと全員めっちゃ酔ってる。酔っぱらいだ。先輩が「飲みが足りないぞ〜、飲め飲め〜!!」とはしゃぐ。楽しそうだ。

私もお酒を飲みながら、しかし全く酔わないし思考回路ずっと正常なので、OLさんらを横目で見ながら、いいなあ、と思いながら、横目っていうかもうめっちゃ眺めた。
私は一生ああなれないんだなあ、と思うとさみしかった。お酒飲んで酔って声でかくなったり顔赤くなったりうざいキャラになったりスキンシップ増してみたかった。

一緒にお酒を飲んでた相手は、アルコールにあまり強くないらしく、ぽやんとしている。眠そうだ。口数が減ってる。いいなあ。なんか変化あって。うらやましい。
当然のことながら、店内の客ほとんど酔っぱらいだ。声がでかいし騒がしい。みんな楽しそうだ。私ひとりだけ、仲間はずれに取り残された気持ちになった。私の肝臓強すぎだろう。
夜も更けて、店を出て、私は化粧室に行った。すこしくらい顔赤くなったかな、と思って手を洗いながら鏡を見た。
私の顔はただ白かった。白いだけだった。