2021年に、百貨店でサングラスを買った(というか夫に買うてもろた)。
たまたまひとめぼれした、Dior のファッションサングラス。見た目と色が気に入ったし、かけたら私に似合っていた。その頃の私は裸眼視力でもまあ歩けたので度なしでも問題なかった。
「いま、コロナでみなさんマスクなさるでしょう。だから濃い色のレンズのサングラスは好まれなくて……(THE 不審者 みたいになるもんな)。それに、サングラスが初めてでしたら、このぐらいの色の薄さのものがおすすめですよ。室内でかけていても大丈夫です」と店員さん。
なるほど。あとレンズの色濃いと瞳孔開いちゃうもんね。(正しくは、紫外線カット機能のない濃いレンズのだと瞳孔が開いた上に紫外線を吸収してしまうそうです)
確かに、すこし濃いめのレンズかけてみると視界が暗くてちょっと怖い。
あとなんかちょうどセールで少し安かった。私はあまりブランドものに詳しくないので、わー 初めての Dior だーと浮かれていた。(結婚前、夫に天下の HERMES の香水を誕生日プレゼントで貰ったことはあったが……たまげました。田舎に HERMES あるわけないので。生まれて初めてあのオレンジを見ました。その香水の空き箱はいま台所の引き出しに入っている。サイズがちょうどよかったので……天下の HERMES に失礼だろ)
「グラサンかあ。すげークワトロ・バジーナみたい(※あんなにレンズ濃くない)」
で、サングラスかけて外に出てみたら、目がめっちゃ楽!!! まず眩しさ軽減!! 私は眩しさが苦手なんや……だから日傘を常にさしているが……。サングラスあると全然違う!! 目が疲れない!!! すごい!! あと UV対策にもなるし、シミたるみ予防にもなる(はず)!!
目の健康のためにも、サングラスかけたほうがよいと眼科医もインターネットで言っている。
気に入って、通常メガネと2本持ちにしたりしてしょっちゅうかけていた。
翌年、夫がとある、かなり癖の強いメンズファッションブランドのお店に洋服を見に行くときにもこのサングラスかけてついていった。たまたまそこのデザイナーさん(というか代表の方というか)が私に「そのサングラス、いつの、どこのですか?」と尋ねてきたので「ああ、去年ぐらいに買ったものですよ」と答えたが、違う、そうじゃない。私はすぐに間違いに気づき、「Dior で、2,3年前のモデルです」「ああ、“新しい”んですね」そう、これが正解。デザイナーさんはサングラスがヴィンテージかどうか知りたかったのだ。ヴィンテージものとかを愛する系のブランドなので……。
そうして私は、コロナ禍で鬱が悪化し、視力をどんどん失っていったーー。
こうなると度付きのサングラスが必要。アウトドア趣味も始めたしね。
そんで高島屋の某眼鏡店で私は眼鏡のフレームを選ぶ。ちなみに私はメタルフレームが大好きである。金属好きだし、綺麗だし、かっこいいし。プラフレームは夫が「光が反射して眩しいよ」というので選ばない。あと単純に見た目が好きでない。
さて、どうするか。私は悩んでいた。ひとつのフレームが目に留まる。しかしこれは……。
いくつか試して悩んでいると、店員さんが「こちらはいかがでしょうか」と例のフレームを渡してくる。やっぱそうきたか。「いや、私これさっき見たとき絶対私に似合うやつだって思ったんですよね……」かけてみる。「ああ、やっぱりいいですね。断然いいです。おすすめです」と店員さん。夫も「似合う似合う」とか言ってくる。
私は鏡に近づけば度なしでも見えるのでそれで判断する。
困ったな、この店員さん「本当のことを言ってくる」。売れ筋商品を売りたいからとかじゃなくて。いやまあ眼鏡フレームって顔にかけるから似合う似合わないがめっちゃはっきりわかるので……。
「このフレームの色違いってありますか?」「ございますよ」黒縁かあ。黒縁ってかけたことない。その黒縁のフレームも試す。うわ、ダセえ。完全に大木凡人や。「こちらはフォーマルな感じと申しますか……」フォーマルかぁ???
うーん。「どうするの? 俺はもう決めたけど。さっきのフレームは?」「うーん」
「あのさあ、これ、茶色いやん。私ブルベ冬なんやけど。顔、死んでない?」「そんなことないよ」
「……じゃあ、これにします。メタルフレームばっかりもアレなんで」
そうして今度はレンズの色を選んだ。参考に Dior のサングラスも持参したが、まあ全く同じ色のレンズはないよね。ひとめ見ていいと思った、Dior に少し印象が近い、バイカラーのグラデーションのかなり薄めの色にした。目の下の青クマが悪目立ちしない色だったし。
なんで素直になれなかったのか。そう……店員さんがすすめてきたフレームは、鼈甲柄だったのだ。デミブラウンってやつ。鼈甲猫を飼っていたことがあるので鼈甲自体は好きだけど、茶色が鬼門なんや、ブルベは。
私は顔タイプ、エレガント。似合う眼鏡フレームは金、銀、鼈甲。(金と銀はもう持ってる)
じゃあいいじゃん、という感じだが、なんか、なんか鼈甲フレームの眼鏡の女になることに抵抗があるのである!! 似合う? 「それは私もわかっている(半ギレ)!」
なんか、なんかさあ……鼈甲フレームの女って、アレじゃん……いや嫌悪感はないが……要するに顔が派手、濃くうるさいタイプの女性は鼈甲とか主張が強いフレームが似合うと雑誌やインターネットにも書いてある。顔が眼鏡に負けないから。そして、鼈甲フレームの眼鏡をかけている女って美人しかいないじゃないですか、なんか自信満々な感じの(個人の感想です)。あとコンサバ〜に敢えて投入! なイメージもある。個性的なので固い職業のひとはかけませんが……。
しかしちょっと前に流行った丸眼鏡、試しにかけたら似合わなさすぎて笑った。
あと眼鏡って顔の形も重要じゃないですか。私、卵型なんですよね。「すごい、見事な卵型だね」と言われて生きてきた。卵型って、「なんでも似合う」とされているので、「あなたに似合う髪型・メイク・眼鏡は?」みたいな特集記事に、そもそも「卵型」が載ってすらいないことが多い。「まあ……好きにすれば? いいよねなんでも似合うひとは」って感じである。なので顔タイプとパーソナルカラーを重視するけど、眼鏡に関しては顔タイプ最優先だよなあ。
そんなこんなで度付きサングラスが仕上がり、受け取りにいった。
まずは私が椅子に座り、調整をしてもらう。「いかがですか?」
「え!? これ本当に色入ってますか?? 全然わかんない……」「まあ室内だとわかりにくいかと」わからん。手ェ見ても iPhone みてもロック画面見ても色味が変わった感じない。
「大丈夫なのか……(何が?)」思わず口にしてしまう。
矯正視力は上がっているので、遠くがよく見える。これはいい。
「遠くがよく見えます」
店員さんがフレームを調整してくださり、再度かけてみる。うーん。思ったよりフレーム、重い(レンズを入れたからか)。
店員さんがサングラスを畳んだ状態で手渡してくるが、フレームの黒っぽい部分に指紋(店員さんの)がべったりとついていたので、思わず「うわ、このフレームめっちゃ指紋目立ちますね。(自分で使う時)気をつけないと……」と言ってしまう。クレームではなく、ただの気付きで、明るく言ったのだが、店員さんがちょっとこう、慌てたような気がした。けど、特に気にしなかった。
「どうされますか? かけていかれますか?」「はい、折角なので」
装備していくかい? のアレである。
で、お礼を言い、夫と交代して、私はショーケースのなかの眼鏡フレームを眺める。ひ、ひゃくまんえん超えのフレームとかある! 18金かあ……。常にかけといて、いざというときに換金できるな。(目ェ見えんくなる? そういう時のためにサブメガネ携帯や)
あと本物の鼈甲(タイマイ)とか、バッファローホーンだっけ? とか。
店員さんにお礼を言って店を後にする。
夫が「店員さんを困らせてたね」と言う。「えっ 私、困らせてた!?」「うん。指紋の下りとか聞こえてきた。おー、ほぎがほぎをやっとる、困らせてる困らせてる、ニヤニヤ、って思って見てた」
思い返せば、ネガティブなことしか言ってないな、私。クソ客では??
「うわーーーーーーー店員さんごめんなさい!!! すんません!! もう腹を切って詫びるしかない!! 切腹する!!」
高島屋で切腹するな。おまえの汚い血で穢すな、店内を。
「高島屋で切腹はやばい」「お客様!! 困ります!! あーっ!!」
しもうた……やってもうた……。
「『わー!! 私 サングラス楽しみにしてたんですー!! きゃーかわいい!! 素敵!! すごく、気に入りました!! ありがとうございます!』を私が……やらなかったから……」
「そんなんやらなくていいよ。客なんだし」
いやしかし……。もうね、これ↓
で、情緒がおかしくなりました。あと、視界に眼鏡のフレームが入って邪魔。あとフレーム、重い。数時間したら軽い頭痛してきたからのちに眼鏡交換した。そうしてさらに情緒不安定に陥る。ひょっとして自分は高い買い物を失敗したのではないかという……あのおそろしき不安に。
「あのさあ、お願いがあるんやけど」夫に頼む。
「私がこのサングラスかけてて、似合ってないかも! とか言い出したら、『似合ってる、似合ってる』などと声かけして落ち着かせてほしい。いま混乱してる。買い物を失敗したんじゃないかと」
「言う言う。ていうか似合ってるし。あとその気持ちわかる。買い物の失敗、心身に来るよね。そして無駄に色々また買ってしまうとか、ある」
話の通じるやつだ。助かる。
その日はもう日没していたのでサングラスの効果、ほぼ試せなかった。
翌日。天気予報は雨嵐の予報だったが、なんかめっちゃ晴れてきた。サングラスの出番!!
室内から外を見る。「普通に眩しい! が、多少は軽減されている」 夫は「目が楽!」と言う。よし、外行こう!!
結果、フレームの重さ、視界に入って邪魔現象、気にならず。頭も痛くならず(その日の夜に痛くなったが関連性は不明)。いいじゃん。あと、夜使ってもいい。スーパーの照明の眩しさが軽減される。いいじゃん。
夫「目が楽! 目が楽! 顔の筋肉が楽!」眩しいと目を細めるから目の周りの筋肉使ってたんやな。
よ、よかったぁ〜〜〜〜。
サングラスのフレームの調整で眼鏡屋さんに行った際は、店員さんに「サングラス、めっちゃいいです」って言おう(同じ店員さんがいるかどうかわからないが……)。
高島屋で切腹せずに済みそうです。(するな、切腹を)